通常のX線検査では100mGyを超えることはなく、お腹の赤ちゃんに影響が及ぶことはありません。ただし、妊娠初期に下腹部の検査で100mGyを超えるような場合には注意が必要です。ただし、100mGyというのは、子供が自然に形態異常を持って生まれる発生率:3%をわずかに上回ることが疫学的に確認できた値であり、100mGyを超えると100%形態異常になるわけではありません。
[表7] 英国における通常の診断手法から受けるおおよその胎児線量[mGy]
検査項目 | 平均線量 | 検査項目 | 平均線量 |
---|---|---|---|
胸部X線 | 0.01以下 | 胸部CT | 0.06 |
腹部X線 | 1.4 | 腹部CT | 8 |
腰椎X線 | 1.7 | 腰椎CT | 2.4 |
骨盤X線 | 1.1 | 頭部CT | 0.005以下 |
胃バリウム検査 | 1.1 | 骨盤部CT | 25 |
ICRP Pub84より
[表8] 妊娠期間における胎児線量のしきい値[mGy]
胎生期の区分 | 期間 | 発生する影響 | しきい線量 |
---|---|---|---|
着床前期 | 受精8日 | 胚死亡 | 100 |
器官形成期 | 受精9日~受精8週 | 奇形 | 100 |
胎児期 | 受精8週~受精25週 | 精神発達遅滞 | 200~400 |
受精8週~受精40週 | 発育遅延 | 500~1,000 | |
全期間 | ー | 発がんと遺伝的影響 | ー |
※発がんのリスク係数は成人と比べ2~3倍高く、遺伝的影響のリスク係数は成人とほぼ同じと考えられている。
放射線概論/柴田徳思編より